丁寧な仕事で
選ばれる物流企業
熊谷市を拠点に一般貨物運送業・倉庫業を営む嶋﨑運輸株式会社は、創業以来「大きな事故ゼロ」を守り続ける、安全と品質にこだわる物流企業。
到着時の荷姿まで計算する積み付け技術は、厳しい品質基準を持つ大手メーカーから厚い信頼を集めています。
その一方で、運行効率や倉庫活用、人材配置・配車の属人化といった慢性的な課題を抱え、「この先どこに力を入れて伸ばすべきか」を見定める局面にありました。
本レポートでは、嶋﨑運輸の強みを改めて浮かび上がらせた品質と人材観、そして商工会議所と専門家と共に行った事業の棚卸しと見える化が、投資判断と事業拡大の土台づくりにつながったプロセスを紹介します。

現場視察が物語る品質の高さ
嶋﨑運輸株式会社は、1993年創業の物流企業です。大手企業から絶大な信頼を得る仕事ぶりはまさに現場の流儀そのもの。
あるメーカーの輸送案件で、国内2拠点から海外へ海上コンテナが出る中、破損の9割が一方に集中し、同社のコンテナからほとんど破損が出なかったことから、荷主担当者が現場視察に訪れるほど、その品質の高さは際立っています。
船積み・陸送の激しい揺れに耐えるよう、詰め過ぎによる廃棄増も避けつつ、養生や積み方を工夫した結果、「荷崩れしない積み付け品質」を評価され、以来重点的に任されるようになりました。
この品質を支えているのは、採用と人材に対する妥協のない姿勢。社長自ら面接し、希望職種を聞くだけでなく、その人が管理向きか、ドライバー向きかといった適性を見極め、場合によっては別のポジションを提案することもあるとか。

「教育以前に、採用で妥協しないことが一番大事」と嶋﨑社長は語ります。そして、「スタッフに共通しているのはプロ意識。互いに牽制し合い、手を抜かない作業を維持できている」と誇らしげです。
ドライバーの多くがゴールド免許を維持し、大きな事故は創業以来ゼロ、保険料率は最上ランクを保持していること、「トラック好き」なドライバーに魅力的な仕様で車体を仕上げているのも特徴的です。
一人一人が「きれいな車両に乗りたい」という意識を持ち、車体をクリーンに保つことが安全運転への意識向上につながり、それが評価にも反映される仕組みが、文化として根づいています。
一方、事業が拡大する中で経営課題も見えていました。第1に、空車で戻る区間をいかに減らすかという運行効率の問題で、自社車両に加え協力会社の車両も預かる配車ネットワークを、無理なく回す難しさ。第2に、倉庫業務の負荷が高まる中での人材確保とリーダー育成で、過酷なコンテナ手積みなどをこなしつつチームをまとめる人材の不足。第3に、配車業務が社長一人に集中し、「会社の生命線であり、嫌われ役にもなりがちな仕事」が属人化していること。どの取引先を伸ばし、、どこに人とお金を投資するか、判断の優先順位付けが急務となっていたのです。
「急がば回れ」で、計画重視へ転換
嶋﨑社長が、商工会議所へ訪れたのは2024年のこと。当初、補助金を希望していましたが、当会議所の経営指導員は「局所的な資金活用ではなく、本質的な土台作りに着手すること」を勧め、中小企業診断士を交えた経営革新計画づくりに舵を切りました。
3時間に及ぶ初回打合せで、取引先ごとの売上、利益、将来性、取引姿勢、人員配置、倉庫の使い方、配車の実態など、普段は社長の頭の中にしかない情報を一つ一つ落とし込んでいく「事業の棚卸し」が行われました。
長年取引のある会社や、新たに伸びてきた案件などを一覧化すると、利益に見合わない案件、努力しても伸びにくい取引先に時間と人手を割いていた実態が浮かび上がったのです。
この棚卸しと議論を通じて、「伸ばすべきはどの顧客群か」「倉庫機能と組み合わせて、どの仕事を囲い込むか」「配車・倉庫リーダーなど人材投資をどこに重点的に行うか」といった優先順位が明確に。数値面では、売上や利益率の目標を四半期ごとに分解し、「このペースで伸ばすには、どの規模の新規案件や増便が必要か」「車両と人員をどのタイミングで増やすべきか」など段取りを可視化(見える化)し、全体像が把握できるようになりました。

策定した経営革新計画で大きな伸びを目標に掲げつつ、その実現を支えているのは「既存の強みを持つ案件で、効率よく仕事量を増やす」という方針です。
情勢の変化もあり、当初検討していた案件は見送り、機材導入も現時点で実行していませんが、しかし、その間に別の大手案件やEC関連の仕事が増え、売上は計画時からほぼ倍増、V字回復どころか想定以上の伸びを見せています
強みを活かし次の一手を模索する
同社が目指すのは、「荷主企業の繁栄に貢献し、その成果を従業員と協力会社にも広く還元できる会社」です。
既に上場企業と直接取引し、自社車両と同規模の協力会社車両を預かる立場として、多くの人と家族を支える責任を自覚しながら事業を進めている嶋﨑運輸ですが、今後も、「品質」と「人材」を武器に、仕事の質と量の両面で成長を続けていく一方で、原油高や建設費の高騰など、先行き不透明な要素も多く、次の大規模投資には慎重な判断が求められています。
物流・運送業は、一般の目には見えにくいものの、社会や地域経済を支える重要なインフラです。
嶋﨑運輸のように、既に高い品質と信頼を獲得している事業者でも、「事業の棚卸しと見える化」を通じて、次の一手がクリアになることがあります。
熊谷商工会議所は、補助金申請の窓口にとどまらず、こうした棚卸し・計画づくりの相談相手として、地域の事業者と共に歩むパートナーでありたいと考えています。今後も必要に応じた専門家派遣や計画の見直し、投資のタイミング相談など、継続的な伴走支援に尽力してまいります。
嶋﨑運輸株式会社
所在地:熊谷市小曽根667
営業時間:8:30~17:30
TEL:048-527-1040
定休日:土曜日・日曜日
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