自社育成の仕組みで
成長の好循環へ
熊谷市中央にある「ストリートダンススタジオAXENT(アクセント)」。地域密着型のスクールとして人気を誇る一方、経営面では悩みが顕在化していました。
それは、「特定の人気講師への依存」と「指導品質のばらつき」です。「〇〇先生がいい」という生徒の依存構造は、講師退職が即座に生徒減少=退会に直結する大きな経営リスク。
当商工会議所への相談をきっかけに、「属人化リスクからの脱却」「自社でインストラクターを育てる仕組みづくり」に向けた経営革新計画が動き出したのは2022年のこと。
本レポートでは、3年にわたって歩んだ組織化への道筋と支援、その成果をご紹介します。

ダンススタジオ事業背景と経営課題
未就学児から小中高生、一般まで幅広いクラスを展開するストリートダンススタジオ「AXENT」は、2016年に創業しました。
代表の鶴田亮さんは、20代からダンサーや講師として活躍した後、プロ野球・BCリーグ「埼玉武蔵ヒートベアーズ」で3年間、広報やイベント運営、営業の実務を経験。そのノウハウを武器に独立しました。
同スタジオが最も大切にしているのは「踊れない子を踊れるようにする」という育成重視の指導方針です。「初めからダンスが得意な子ばかりではない。一人一人に合わせて、今何を必要としているかを考えてアドバイスする」という鶴田代表の目線は、生徒や保護者から絶大な支持を集めています。学校教育へのダンス導入やSNSの普及という追い風も味方に、口コミや紹介で生徒数は年々増加し、地域に根差した人気スタジオへと成長を遂げました。

しかし、順調な成長の裏で、二つの経営の壁に直面していました。
一つ目は、「外部講師への属人化と指導品質のばらつき」。当時、外部講師がそれぞれのメソッドで教えていたため、スタジオとして統一した指導方針がありませんでした。
保護者から「〇〇先生じゃなきゃウチの子はやらないと言っている」と聞くたび、嬉しさの反面、講師の退職が即座に生徒減少につながるという高いリスクに危機感を募らせたと言います。
そして二つ目は、「キャパシティという物理的スペースの限界」です。スタジオの床面積や稼働時間には上限があるため、生徒数を増やすだけでは、いずれ経営の成長に限界が来ると感じていました。安定した事業継続には別の発想が必要だと次の一手を模索していたのです。
課題解決のきっかけと会議所の伴走支援
ビジネスモデルを見直すべく、相談に訪れたことから伴走支援がスタート。
当商工会議所の担当経営指導員がマッチングした中小企業診断士を交え、「経営革新計画」を策定します。まず専門家が指摘したのは「地域の相場に比べ月謝が安価であること」と「限られたスペースで成長するには顧客単価の向上が不可欠であること」でした。しかし、単純な値上げは生徒の離脱を招くリスクもあります。そこで提案されたのは、「値上げではなく、生徒が複数のレッスンを自ら選びたくなる仕組みづくり」という発想の転換です。
複数のクラスを受講してもらえれば、無理なく顧客単価が上がるだけでなく、特定講師への依存(属人化)も自然と薄まります。そして、この戦略を実現するための大前提こそが、スタジオの経営革新計画の柱となる「インストラクターの自社育成」でした。
同社は週1回・3ヶ月間を1クールとする「インストラクター養成講座」を開設。レッスンの作り方や指導技術、教育実習といった実践面だけでなく、「講師としての心構え」や「保護者対応」などのマインドセットまでを12段階で体系化し、スタジオの理念を共有できる人材の育成に乗り出しました。

特筆すべきは、受講生に「卒業後の自社所属」を義務付けなかった点です。
「うちの養成コースを受けたからといって、AXENTに縛る必要はない」という鶴田代表の柔軟な姿勢が、結果として門戸を広げ、質の高い人材が集まる開かれた育成システムを構築することに成功。これにより、スタジオの指導品質の均一化と、複数受講による収益性の向上が同時に動き出し、目標120%増につながっていきました。
成果と展望会議所の支援活用
インストラクター養成講座は3期開催され4名が受講、うち2名が現在も「AXENT」の講師としてクラスを担当しています。
最も大きな変化は生徒たちの「行動変容」。以前なら「先生が辞めるなら」となりがちだった生徒が、今は「次はどの先生のレッスンにしようか」と、自発的に別の講師を選ぶようになり、指導スタイルは違えど、育成への向き合い方という根っこの部分が講師間で共有されたことで、特定講師への依存リスクは大幅に低減。
週3〜5回通う熱心な生徒が生まれるなど、顧客単価の向上にも確かな成果が表れています。
自社メソッドを共有できる講師陣を育て、スクールの一体感を高められたことは大きな前進です。
鶴田代表は今後、同スタジオで育った生徒が将来講師として戻ってこられる受け皿として養成講座を継続しながら、「ダンスを習う・見せる・発表する、すべてをAXENTで完結できる環境づくり」という新たな夢へ向かっています。
商工会議所は、計画策定という一つの節目にとどまらず、次のステージへと進む同社の挑戦を、これからも最も身近なパートナーとして伴走支援していきます。
Street Dance Studio AXENT
熊谷市中央3-15 2階・3階
営業時間:10:00~22:00
TEL:070-1512-7474
定休日:土曜日・日曜日
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